ーイチロー騒動で剥がれた化けの皮ー「なうちゃん(nauchan0626)」という“左の安倍晋三”【前編】 

ー権力は腐敗する。絶対権力は絶対腐敗するー

ジョン=アクトン


イチローが引退した。
著名なアスリートであり、 わたしにとってもかけがえのない存在だったー
などということは全然ない。
プロ野球にもイチローにも興味ないわたしは、「 なんか知らないけど世界で割と活躍してる日本人」 程度の認識だったりする。
ふーん、そう……と思っているところに、左派・リベラル・ 反差別陣営がざわつき始めた。
イチローレイシストだというのだ。 特に強く主張しているのはなうちゃんというアカウントだった。 ちなみに当時は相互、しかもそれなりに古い相互である。
わたしは気になって見にいってみて、唖然とした。

ソースが保守速報

なのである。
いやいや、なうちゃんがノンポリであるとかネトウヨ表現規制反対派(とは名ばかりのネトウヨの二軍) だったならまあわかるよ?
しかしなうちゃんはリベラル、左翼、 反差別の側に属する人間である。
保守速報が保守とは名ばかりの、 悪質なデマを大量に流すヘイトサイトであることくらい知っている と思っていた。
こんなものがソースだ、なんていわれて信じられるわけがない。
しかも十三年前から遡る話である。
事実として、その記事は悪質なミスリードを誘うものだった。
イチローが成績不振であるにも関わらず、 日本人であることだけを理由に選ばれたことを自虐し、「 日本に産まれただけで勝ち組」といった台詞を切り取り、 ネトウヨのよくいう「日本スゴい」言説だと思わせる代物だった。
わたしはなうちゃんに(保守速報の他に)ソースは? と聞いたところ、 信者からイチローが安倍支持者であることを示すソースが提出され た(本人はスルー)。
こんなの、納得出来るわけないだろう。
確かに、 安倍支持者とレイシストの親和性は無視出来ないほど高いが、 十三年前からの話だ。その頃の安倍は「何処にでもいるクソ右翼」 であり、信者=レイシストの蓋然性は今ほど高くはない。 今ですら、なんとなく支持している善男善女や、 流されて支持しているだけの人、無自覚な差別主義者が大半で、 支持者がすべて全身全霊レイシストでもない。 確かにネットの安倍支持者はそんなのばかりだが、 リアルは必ずしもそうではないのだ。
わたしは反発した。そもそも、 十三年前からの話を掘り返しているわけだ。チャラにしろ、 とはいわないが、確かな証拠もなく、 しかも昔のことを掘り返すのか。
しかしそれでも、左派・リベラル・反差別の面々は、いや、 イチローは差別をした、という。
わたしは興味を持って調べてみた。
そうすると確かに、問題発言は出てきた。
東亜日報ソースの、イチローが韓国の地で、「にんにく臭い」 といったこと。
これに関しては差別発言だとわたしも思う。
もう一つ、問題にされていた発言としては、「 韓国には向こう三十年間、日本に手を出させない」という発言だ。
これに関しては違和感をわたしは持った。まず、 相互のmold氏が検証していたが、これ、 インタビュアーが勝手に(韓国)だとか、(台湾) だとかをわざわざ注釈していた記事が元ネタなわけで、 結局のところ、目的語が不明なのだ。
目的語不明で差別もクソもないし、 よくあるマイクパフォーマンスの類ではないかとも思った。
しかし、相互の人の解説ツイートで考えを変えた。
どうも、サッカーの国際戦でこの手の挑発はアウトらしい。 いわれてみればフーリガンとかいるわけだし、 それなら集団国威昂揚競技である野球の国際試合で、 同様の発言を禁止にするべきだというのも妥当な話である。

まあそれでも昔の話をいま掘り返すのかとは思ったし、 イチローが引退会見で、 海外で自分がマイノリティになったことで人の痛みを慮るようになった、新しい自分に気付けた、という話も出てきた。

もやもやが消えなかった。
改心しようと成長しようと、人は絶対許されないのだろうか。
ましてや、イチローは「差別者」ではあったかも知れないけれど、 「差別主義者」とは到底いえない。 せいぜいが無意識的にうっかり差別をしてしまった普通の人間であり、差別という薄汚いものを思想として選び取った人間では、 ない。
そんなことを考えているうちに、 ふぎさやか氏のツイートを見つけた。 

イチローは何処にでもいる普通の日本人、 普通の差別者に過ぎない。だからこそいけない。 イチローを擁護するのは結局のところ、“ これくらいなら自分もやっちゃっている” 自分の自己弁護に過ぎない」

確かにそうだ。イチローを擁護するのは結局、自己弁護であり、 自己正当化でしかない。

そこでわたしはTogetterに一連のやり取りと、 自己の考えの変遷を述べて纏めた。

過去の差別者はどうすれば許されるのか、或いは許されないのか。
  
そして、自分自身の内なる差別心にどう向き合っていくのか。

イチローレイシストなのか?』というタイトルで纏めを作り、 自分に可能な範囲でわたしは公正にツイートを選んだ。 それは勿論わたしにとっての公正であり、 他の人には不完全なものだったのだろうが。  

それでも、 なうちゃんがソース保守速報について謝罪したことも纏めに入れた し、 なうちゃんを批判していた江戸西氏がソース黒田勝弘という信頼できない輩を引っ張っていたことにも言及した。
なうちゃんの批判側になうちゃんの病気についてあれこれいっていた、「ルール違反者」が何人かいたことにも言及したし、 自身が差別者、マジョリティとしての思考で発言していたことも、 正直に包み隠さず解説に書いた。

ここで、これで一段落ついたかな、と思った。
ところが、クレームが入った。早い段階でなうちゃんのソース・ 保守速報を批判していた相互の神條さんからである。

神條さんに気付かされたことは、なうちゃんは、 飽くまでソースに保守速報を使ったことに関して謝罪しただけであ って、 保守速報のミスリードに乗ったことは謝罪も訂正もしていない、 ということ。
そして、 数日前にもなうちゃんは民主党政権自民党と変わらない韓国差別 政権である、何故なら菅直人は朝鮮高校無償化をしなかったから、 と主張したツイートをしていることだ。
これは「デマ」といっていい。ヘンリー・ クレイ氏が指摘していたが、実現しなかったとはいえ、 菅直人政権は朝鮮学校の高校を無償化しようとしている。
少なくとも、「自民党と同レベルの韓国差別政権」 であるわけはない。
それに気付いたわたしは、保守速報のミスリードに乗ったことと、 菅直人政権が自民党レベルの韓国差別政権であることの撤回をなうちゃんに求めた。
イチローが差別者であったことと、 この二つがなうちゃんの撒いた( 意図したものかどうかは別として)デマ、 好意的に解釈しても誤解、 或いは歪んだ認識と呼ぶべきものであるのは明らかだったからだ。
これについての回答は驚くべきものだった。
「文脈はどうあれ、日本人に産まれただけで勝ち組、 というのは差別」、「 どっちみち朝鮮学校高校を無償化しなかったんだから菅直人民主党 政権は自民党と五十歩百歩」というものだ。
前者に至っては、差別の構造や文脈、 差別とは何かをそもそも無視し、 機械的に差別パターンとされる文字の並びだけ覚えて差別認定する ネトウヨ表現規制反対派の、「ジャパンヘイター」、「 大日本帝国へのヘイトスピーチ」、「ナチス差別」 などといった寝言とどう違うのかと思うし、 後者に至っては完全に結果だけしか見ていない暴論だ。
わたしは更なる抗議を続けた。なうちゃんだけでなく、 なうちゃんを盲目的に信奉する、熊猫やブレーメンにも。
熊猫はこういった。「 北朝鮮の韓国への砲撃で一旦菅直人は待ったをかけたのだから、 韓国差別政権だ」と。
ブレーメンも大差無いことをいっていた。
それはおかしい。何故なら、 なうちゃんはそんなことは一言もいっていない。 明らかに後付けの理屈だし、そもそも、 菅直人は実現に至らなかったとはいえ、 朝鮮学校高校無償化再開の指示を出したのだから、「 自民党並の韓国差別政権」であるわけないだろう。 自民党ならそもそも再開どころか、 ここぞとばかりに永久凍結にしただろう。
コイツらには0か100かしかないのか。
第一、 こうして後付けで相手を攻撃する理屈や理由を探すことこそ、 なうちゃんやその支持者(というか、信者だと思うが。 あのレベルだと)の忌み嫌う、 差別主義者たちのやり口ではないのか。
何を血眼になって「攻撃する理由」を探しているんだ。 おまえたちは差別に怒るのか。差別者を憎悪するのか、 どっちなんだ。
後者であるならば、まさしくそれこそが、「差別主義者」 の姿だろう。わたしは反論を繰り返した。
根拠を挙げたり、 或いは日本経済新聞という具体的ソースを示して。
なうちゃんを含め、取り巻きの信者の意見は同じだった。
完全に思考停止していた。なうちゃんのいうことなら、「 白でも黒」なのだ。 

まさしくそれは、「ネトウヨ」の姿だった。
ネトウヨ安倍晋三に盲目的に従い、 まごうことなき極右でありながら、 時には右翼的ではない主張すら安倍を擁護する為であれば躊躇わな いのと、寸分違わなかった。
思想的には左翼、リベラル、反差別であっても、 行動パターンは既にネトウヨのそれになっていた。

そこにあったなうちゃんの姿はまさしく、「左翼側の安倍晋三」 に他ならなかった。